Sちゃんのこと

こんなスローカフェをーやっているせいか、わたしがお金に縁遠く見えるのか、よく言われるのは、
「別に儲けなくてもいいんでしょ?」ということばだ。
「いや、そこそこ儲けがなければ困りますから」とあいまいなことばを返していたけど、この度、わたしは稼ぐことにしました!
と、断言することが大事なんである。

その理由が、この子。

彼女は、いま金曜日のみ、お手伝いに来てくれているSちゃんだ。
社会にテキパキ対応できるタイプじゃないせいか、家の中で好きな絵を描いたり、DVDを見たり、家事を手伝ったりして過ごしていているらしかった。
そんな彼女ことを心配していたオバ(わたしの友人)が、もっと外界に触れさせようと、近所である「風の家」のイベントに連れて来たのがSちゃんと出会った最初だった。
そのとき話しをして以来、仲良くなり、今回、オバさんの勧めもあって週に1回カフェを手伝ってくれるようになった。
彼女を見ていると昔のじぶんや姪っ子のことを思い出してしまう。
わたしもニートだった時代がある。
すんなりとあたりまえのように社会のシステムに入っていけないタイプだ。
こうゆうタイプは、もう一匹狼になるしかない。
安定や保証など考えず、じぶんができる仕事を探すか、自ら仕事を作り出して居場所を作るしかない。
わたしも姪っ子も幸い独自の道を探すことができた。姪はまだ道の途中だけど、わたしはすでに「合う」仕事から、もっと合う仕事を作り出し、今はそれが楽しくておもしろくてならない。
そんな場所に「お手伝い」に来たSちゃん。初日はカチンカチンに固まってキンチョーしていた。
そんな彼女だったけど、初日からとりあえずすべてをやらせた。
水の出し方、お客様への接し方、ピザ作り、ベーグル作り、お茶作りなどなど。
一つひとつにメモを取り、はい!はい!と言いながら彼女はしんけんに覚えようとする。
素直で礼儀正しく、気を使い、失敗をしないようにと必死だ。
そこで一番大事なことを言った。
「失敗をいっぱいしていいからね。失敗してあたりまえなんだからね。マニュアルじゃなくてSちゃんがやりやすいように作りあげていくんだよ」
そして、一つ覚えるごとにわたしは褒めて、いいね!をことばにしていった。
客がいないときは大好きな本を読みふけっているか、わたしとお茶飲んで映画の話しとかしていたり、彼女も日に日にリラックスしていった。
正直、ぜんぜん期待していなかったけど、欠点を探すより、いいところにライトを当てると人はここまで成長するんだ、という事実に驚かされている。
今やピザもベーグルサンドも完ぺきに作り、POPも鮮やかに描いてくれるわ、自ら進んで庭も掃くし、大量の皿も洗ってくれ、いろんな雑用をそれは一生懸命、楽しそうにやってくれる。
今や、わたしの方がどれだけ助けられているだろう。
何よりSちゃんは来るたびに明るくなり、「ここに来るといろんなことを教わり、すべてが勉強になるんで、ほんとうに楽しいです」と元気な声でいい、毎週金曜日が楽しみでならないともいう。

今のところ彼女には現物支給しかできないけど(それさえも取りたがらないけど)いつか少しでもお給料を払いたいと思うようになった。
そう思って「よし!稼ぐぞー!」と天をあおいで宣言したら、次の週から、やけに客が多くなった。
その上、予約が入るわ、貸し切りが入るわ…県外からもリピーターも増えて来た。

これも新しい風を入れたからかな〜?
わたしにヤル気を与えてくれた(笑)Sちゃんに感謝です。