ふたりの叔父さん

今のところ、わたしには叔父さんと呼べる人がふたりしかいなくなってしまった。
ひとりは父の弟である叔父さんと、もうひとりは福岡県に住む母の妹のご主人だ。
その母方の叔父さんが急に肺炎になったという。
相方の仕事が終わり、連休休めるようになったのもあって、今日、気になっていた母方の叔父さんを見舞いに福岡県の外れの町まで行って来た。
病院には従妹とその娘、息子であるマンガ家の従弟も来ていた。
病室では、たくさんの管につながれて酸素マスクをされ苦しそうにハアハアと息をしていた叔父さんがいた。
昨年の初盆以来の対面だった。
骨折をして救急車で運ばれ、そのまま入院したようだ。
リハビリを続けて快復に向かっていたのに、今回の肺炎である。
院内感染だという。
あまりの変貌ぶりに一瞬、言葉を無くした。うちの両親もそうだったけど、老人はわずかなことで急変する。
すぐに母の時のことが頭に浮かんできた。
治るために入った病院でなんでこんなことが起こるのだろう?
従姉たちは医者のいかにも事務的な対応に怒っていたが、その気持ちは本当によくわかる。
このまま寝付いてしまうのだろうかという不安さの中で、もう一度起きて復活してと願う従妹の気持ちもかつてわたしが経験したものだ。
なんだかいろんなことが再現されたようで切なくなってしまった。
救いは従妹たちが明るいこと。姉弟、仲がいいことだ。
食事をしてお茶を飲み、相変わらず冗談ばかり言う従弟の話しにみんなで笑いあって、和やかいい時間が過ごせた。
帰る間際にもう一度病室に行ったとき、叔父さんはやっと目を開いてわたしを見てくれた。
寝込むには早いよ、叔父さん。もう一度起きてうちの田舎に来てよ。
そう声をかけると酸素マスクの向こうで何か答えてくれた。
帰ったら、今度はもうひとりの父方の叔父さんを訪ねてみようと思う。