なんだかうれしい対談


(昨夜見た金星が光る夜景)


糸井 : 「曖昧」というのは、わりとぼくもそういうところがあって、自分のテーマなんですよ。 「曖昧」という言い方で出てくるときもあるんだけど、「どっちつかず」と言うかもしれないし、「言いようのないもの」と言うかもしれない。「何かいいもの」っていうのも、それの一種かもしれないです。

西川 : ええ、わかります。

糸井 : みんなが言っている因果関係、「これこれこうだからこうなんだ」っていうロジックに対抗する曖昧なものを、もっとテーマにしたいんですよ。逃げたり隠れたりしながら、表現したいことがいっぱいあるもんだから。

西川 : 「言いようのないもの」。

糸井 : うん、「曖昧な」。

西川 : はい。

糸井 : ぐずぐずしてたいんですよね。

西川 : ええ。やっぱりぐずぐずの範囲が世界にはいちばん広くて、実はそこがいちばんおもしろいんじゃないかと思っているので。ジャッジできるものなんて、大したことじゃないというか。

糸井 : そうなんです。つまりジャッジができるってことは、反復できるってことですから。反復が心もとないもののほうが‥‥おもしろいですよねえ。

西川 : そうですね。

糸井 : そこなんですよ。で、それは「反マニュアル」なんですよね。

西川 : ええ、そうですね。



これ、今日のほぼ日に掲載された、糸井重里西川美和監督(『蛇いちご』『揺れる』『ディアドクター』の作品を作った映画監督)との対談の抜粋なんだけど、これ読んで、S先生発言に次ぎ、またまた目からウロコ!
あいまい、ぐずぐず、ブレブレ、どっちつかずのわたしが、妙に励まされた対談だった。
「そっかあ、こうゆう考え方もあるのかあ、あいまいでもいいんだ」って。
この西川監督の作品はどれもが、人間の多面性やものごとの複雑さ、わりきれない感情などを声高ではなく静かに伝えていて、とてもこころ惹かれる。
地方の映画館に来たとき、トークショーを見に行ったけど、シャイなふつうのかわいい女性(ひと)だった。その発言の中で、この人は気持ちに触れた小さなこと、ちょっと揺れた感情などを見逃さず、ゆっくり、じっくり考えて、じぶんの中に入れていく人なんだろうな、と感じたけど、ほんとうにそういう人のようだった。
思えば、ことばにならない「あいまいさ」から、表現(ダンスとかアートとか)は生まれてくるのだけど、これをアーティスティックじゃない方法で、日常の映画にしたてるのが、すごいなあと思う。

なんだか、うれしかった。