90歳の部屋

  

これが、今年90歳になる人の部屋というのだから驚く。
久々に海辺の俊子さんちにお邪魔した。同居人のY子がドイツに住む俊子さんの娘さん宅にお邪魔したこともあって、ご挨拶がてらY子と相方の3人で出かけたのだが、今年90歳になろうという俊子さんも、その部屋も、ぜんぜん変わってなくて、本当にうれしかった。
前日電話したら、いつのように「はいはいー。午後はお昼寝しますから午前中にいらしてね。お昼食べるなら、ご持参してくださいね。私のことはご心配なく。おかまいもできませんけど、お茶くらい出せますよ」との気持ちのいい返事で喜ばせてくれる。
自分のペースをくずさず、気を使わせず、オープンマインドで人を迎えてくれる。
生き方も暮らし方も、ずいぶん前から彼女は私の理想なんだけど、とてもとても…足元にも及ばない。自分の「場」を作ることに関しては、もう天性のセンスと知性、そして生き方にしても、ターシャのごとく意志の強さと懐の深さ、そして、やさしさが備わっている。
まがい物や嘘をしなやかに排除して、心のままに従いコツコツと自分を創り上げて来た人なのだろうと思う。
90歳にして未だ創作意欲もたっぷり。壁には新作の絵、自室には次の本のための書きかけの原稿、新聞の切り抜きなどが雑然と置かれている。毎日愛犬の世話と散歩をかかさず、部屋には庭の花を飾り、自分で食事を作り、海を眺め、たまに街に出かけたりしながら、一人暮らしを持続している。できる限りは自分でして、できないことは人の助けを拒まず、独りの時間と友人との時間を静かにと楽しんでいる。
これこそナチュラルライフ!
会話も、おもてなしも、笑顔も、すべて自然。だから、こちらもリラックスしてついつい海の見える部屋に長居したくなる。だけど、お昼寝の時間は邪魔せずに、お昼の時間を過ごしたあと、おいとまして、お天気のいい海辺の歩道を散歩して帰った。
俊子さんから教わりたいことはたくさん。どうぞ、100歳までお元気で。