神様、仏様の話

 うちの裏山は古墳である。それも前方後円墳らしく、県の指定になってもいる。
その昔、都会で財を成した祖父が退職後、田舎に帰り、あの山に家を建てたいと、山ごと土地を買い家を建てた。そのとき、現れたのが土器や勾玉(まがたま)で、初めてこの山が古墳だったと発見できたという。
掘り当てたのが温泉や石油なら大層ありがたいものの、古墳じゃなあー。ましてや、そこに家を建てるたあ、バチ当たりな!…と、いう噂も田舎のことだから出かねない(いや、実際にあったそうな)。それで、祖父がその山に神様を祭ったのだ。その神様の裏には、祖父の遺言のようなものが掘られている。
それは、「子々孫々に至るまで守り通せよ」みたいなこと。
うちの父は養子だが、その言葉の呪縛(?)のために東京に離れることをかなり渋っていた。それを踏み切らせたのは相方の「この家は僕たちが守りますからいつでも帰って来てください」という言葉だった。安心してやっと決心したものの、父は最後に家を立つときも、足が悪いので山まで登れず、泣きそうな顔で、山に向かって「すみません、ごめんなさい」と最敬礼して家を発った。
あのとき相方が、義理やダテでそんな言葉を吐いたわけではないんだなと、最近の働きぶりを見てそう思う。そう言えば、私の周りには、あきれるほど霊能者が多いのだが、その中の一人が「ご主人が行くと土地が喜んでいる」と言われたことがある。事実、この土地にとても愛情を抱いている感じなのだ。どう言ったらいいのか、相方とこの土地の相性がいいようなのだ。
実は彼がまだ、私と友人だった頃、相方が初めて私を女性として意識した瞬間があったそうで(笑)、それが、うちの裏山だったという。不思議なことだけど、たまたま電話をしたとき、私は実家の家で彼も祖母の墓参りに(実家の本家が同じ田舎)来ていた。それで、まあ、近くにいるならうちの実家においでよ、パソコンも見てもらいたいことだしと誘ったらひょこひょことやって来た。で、彼は遊びに来たのだが、彼が来るなり、私はなぜか、いきなり裏山の神様の所に連れて行っているのだ。
そこで、彼はこの土地がとても気に入ったという。
そんな相方が、今は、この通り裏山の草をここまできれいに刈って、神様や古墳を守っているのだから、なんだかとても不思議な気がする。
 
このことに父はいつも喜び、とてもありがたがっているのは言うまでもない。
実は、ずいぶん昔、私もかなり霊能力の強いおばあさんシャーマンから言われた忘れられない言葉がある。
「家の仏様はあんたが守るようになっているね」と。
この言葉で私は、ああ、結婚しないということか。と理解したが、そうではなく、こういうことだったのか、と今になってそう思い出した。事実、私は父が仏様に毎朝座してお参りしていたように、家の行き帰りは必ず仏様にあいさつをしている。ただいま、帰りました。よろしくお願いします、と。
 
なんだか、私らはこの「家」に呼ばれて来たような気がしてならない。呪縛というのではなく、こちらも喜んでいるのだから、共存共生とでも言った方がぴったり合う。
まあ、それにしても相方さんの働くこと。マンションではダラけているのに、雨の中でもかまわず、草刈に雨どいの掃除まで。
  
本当にご苦労さま!
休日の雨上がりのお昼ごはんは、近くのおばちゃんからいただいた梅干とキュウリでした。