あこがれのビッグテーブル

いつの頃からだろう、ビッグテーブルにあこがれ始めたのは…。
夢を語るとき、必ず「ビッグテーブル」という単語を口にしているような気がする。
たぶん、大昔に見た雑誌フィガロに載っていた、少しぶこつなビッグテーブルの写真が記憶を残っているのかな?
確か「美的に散らかす」という特集タイトルが付いていたような気がする。
広いリビングの中に、デンとビッグテーブルが一つ。
食事もできて、パーティーもできて、仕事も料理のしたくも手紙を書くのも、すべてその大きなテーブル一つでまかなえるという、そんなテーブルだった。
無造作に置いたペンや雑誌、フランスパンのかじりかけなどが、やけにカッコよかったのを覚えている。
それ以来、外国映画に登場するテーブルが気になっていた。家族で食事をしたり、仕事や作業机に使ったりしているテーブルにいつも目を奪われていたな。
こじんまりときれいに整ったダイニングテーブルではなく、デンと思いっきり大きなテーブルは、いったいわたしの中の何を象徴しているのだろう?
最近、パーティだけでなく打ち合わせや会議が我が家で行われることが増え、ますますあこがれが募る一方。
昨夜、そのテーブルを逃してしまった。


伸縮式テーブルで伸ばせば190センチになるというものがオークションに出ていると、ネットオークションの達人であるSデザイナーが紹介してくれたのだ。
落とすなら〆切は夜の9時だという。
「競る人数は今のところ一人。あと10分足らずだけど、どうする?」とわざわざ夜、電話もいただいた。
サイズも送料を含めた価格も悪くなかったし、キャスター付きは便利だろうと思った…けど、少し迷っていた。
理想中の理想とは言いがたかったし、相方もノッてこなかったし、どうも化粧合板っぽいところが気になったのもあり、返事をぐずぐず伸ばしてしていた。
そんなときに、突然、3年ぶりくらいの知人から電話が入った。
なぜか話し始めて彼女は電話をなかなか切ろうとしない。ついつい話を聞いているうちに、オークションの時間が切れしてしまった。
「縁がなかったんだろう」とS先生に言われて、ああ、そうだろうと気付いた。
今は買いどきじゃないってことかも。
もっと他にもいいものがあるのかも。
こうやって、また、わたしはひたすらビッグテーブルにあこがれる日々を送るのだろう。
いつか、出会う日のために。
そのとき、きっと何を求めていたのかが、わかるのかな。