父のお客様

父が逝ってもう10年近くになります。

 

父は小学校の教師でしたが、父が教頭になったのは小さな町の小さな小学校でした。

そこで働いていた、当時はまだ新人さんだった若き女性2人が今日、「風の家」を訪ねて来てくれました。

一人は養護の先生で、もう一人は用務員さんだったそう。そのお二人も、もうお孫さんがいる年。年を重ねるごとに、どうしてもお世話になった教頭先生のお参りに行きたい、との思いがつのっていたのだそうです。

そんなとき、用務員だったK子さんと同じ町のKが、わたしの友だちだったと知り、縁がつながり、念願かなって養護のAさんと一緒にお参りに来てくださったのです。

 

イベント設営準備でバタバタしていたけど、わざわざ来てくださるというお二人を迎えるために、朝早く起きて部屋をきれいに掃除をし、お花を活けた仏壇に父の写真をかざってお待ちしました。

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そして訪れたお二人は、仏壇に深々と頭を下げるなり、涙を流し始めました。

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長いこと手を合わせてお参りをしてくださったあと、テラスでお茶をしながらお話しを伺いました。

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養護の先生だったAさんは

「わたしは初めての勤務でとても緊張していたのですが、教頭先生は何を聞いても、わかりやすく、やさしく教えてくださいました。失敗をしても気にしない、大したことじゃないと、いつも明るく笑ってくださった。そんなわたしに同じ同僚の先輩の先生が言ってくださったんです。『あんな教頭は他のどこにもいないよ、あなたは運がいいんだよ』と。長年養護教師として携わってきましたが、ほんとうにその通りでした。あんな教頭先生はどこにもいませんでした」

 

用務員だったK子さんもまた涙をためて、

「わたしはいつも用務員として雑用ばかりやらされ、少し嫌気がさしていた頃、教頭先生が言ってくださったんです。『いいかK子ちゃん、教頭と用務員は縁の下の力持ちなんだ。だから僕らがいないと学校は回らないんだからな』それを聞いてから、わたしは用務員という仕事に誇りが持てるようになったんです」

 

その2人が口を揃えて言ったことばは、「いつもいつも娘さんのことを楽しそうに話していました。うちの娘は自由で独立心が強くてなあ〜と。娘さんは教頭先生に似たんですね」

 

久々に父の話を聞き、わたしもつい込み上げてくるものがありました。

わたしの知らなかった父の話。10年近くなってもこうやって忘れずに訪ねて来て涙してくださる父は、ほんとうに慕われていたのだと思います。

K子さんが持ってきてくれた写真に若き父の姿がありました。

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父の日を前にして、あたたかく、尊い時間を頂きました。

 

よかったね、父さん。

あなたの娘で誇らしかったよ。