この「風の家」には不思議な何かを持っていることを最近はもう疑わなくなった。
それは、ここを訪れてくれる人たちを見ていればとてもよくわかる。
あの急な坂を登ってくる人々。
みんな個性派で、感じのいい人たちばかりだ。
例えば、一人でふらりと来たまだ女の子とも言える女性は、上の農業技術大学で農業を学ぶ学生。
勉強が嫌いだから農業ならいいかなと農業こうに入ったけど実践が大変で、農業の深さを知った。
この春には実家に帰って農業を始めるのだという。
「卒業する前にここを知ってよかった」と翌日には友人を連れて三日連続で来てくれた。
同じようにやはりまだ大学生の女の子は、物作りが好きで、映画が好きで、園芸を習っている子。
「この夏はこれに挑戦します」と見せてくれた写真は朝顔のオブジェ。
「こういうふう咲かせるにはかなりの技術がいるんです」ってしんけんに楽しそうに話してくれた。
その後には福岡から転勤して来たというイケメンの公務員(?)2人。
先に来てくれた青年は、この町のことを何も知らずに歩いていたらカフェがあって登って来たと。
神社仏閣が好きというのでこの町で有名な寺を教えると、なんと1時間かけて歩いて行ったらしい。
彼も何度も通ってくれ、昨日は先輩を連れて来た。
その後に来たのは、詩人の男の子(つっても30代だけど)。
茨城出身で流れ流れて(笑)大分に来たが、先日のイベントに電車で来て、この町に降り立ったとたん、ここに住みたいと思ったそうで(笑)、いまはバイトをしながらイベントで詩を語って、自作の歌など歌っているが、仕事は林業をやりたいのだという。
そんな話しを聞いていたら、そのときにたまたま現れたのが、以前うちの木を切らせてくれと言った木こりのオジさん(爆笑)
一度カボスを持って来てくれたけど、今回は入るなり、
「スパゲティあるかえ?」
「ありません」
「酒は置いてるんかえ?」
「ないです。うちカフェですし。おいしいベーグルならあります」
「なんかえ、そりゃあ」
「まあ、食べてみてください」と誘うと、
ベーグルと珈琲を食べ、その後チーズケーキまで注文。
そのオジさんを詩人で林業に憧れる青年に紹介した。
キッチンに聞こえてくる弾んだ声で、木の話しで盛り上がっているのかと思いきや、なんと詩の話しをしたのだそうだ。
オジさん、ワーズワースやホイットマンが好きだというので、いい話ができたと青年は喜んでいた。
ほうらね、うちに何度かくるだけあって、タダの木こりじゃなく、タダものじゃないでしょ?(笑)
その後、詩人は自作の歌を披露してくれて、その時来ていたわたしの友人たちを観客にして、演じてくれた。
夜、友人の中に料理上手な常連のお客様K氏もいたので、急遽、彼の手料理を呼ばれることになり、その青年も誘ってみんなで夕食会になった。
おもしろいカフェよね〜とつくづく思う。
来るお客様はみんな長居をしてくれ、じぶんのことを話し、何度か来てくれるうちにいつの間にか名前で呼び合い、旧知のような知り合いなってくる。
だれもかれも個性を持った素敵な人たち。
「風の家」が引き寄せてくれる贈り物ならず、贈り人のようだ。