とんでもないハプニング!

その日、晴れ渡った日曜日の朝のこと。
上海に発つ相方を駅まで無事に見送ったわたしは、うちに帰るなり武者震いした。

「よし!やるぞー!」

今日こそイベントや雑事やなんやかやで遅れに遅れている原稿を仕上げるときだ。
そう心に誓い、まず、スケジュールを組む。
何時から何時までこれを仕上げ、次にこれにかかり、何時まであれを仕上げる。
完ぺきだった。
このスケジュール通りに行けば、必ずできあがる。
何が起ころうと、今日という日だけはダレにも何にも邪魔させはしない!
パソコンにかじりついて、原稿を仕上げてやる!

よほどのことがない限り。。。
よほどのことがない限り。。。

脇目もふらず食事も取らずに原稿にむかっている時である。
その「よほどのこと」が起こってしまったのである。


それは博多駅に着いた相方からの電話だった。
第一声が響いた、

「パスポート忘れた!」

これから空港に向かうというとき、初めて気付いたのだという。
すぐに第二声が響いた。

「これから持って来れる?!」

顔まっさお、頭まっしろになるわたし。
頭の片すみで思ったのは、
「よほどのこと」とはこうゆうことを言うのか!だった。

即、叫んだ!
「今から国際空港行きバスの時刻見てみる!そっちは変更できる便ないか聞いてみて!」

ネットで時刻を調べていると、再び相方からの電話がなる。
チケットは変更が効かない、次の便は翌日の同じ便しかない。
もちろん、チケットは改めて買うことになるので、自腹切ることになるが、それより何より仕事に間に合わない。
客は上海人だ。
国際問題にまで発展しかねないかもしれない(そりゃウソだけど)

絶体絶命だ!

そのとき、時刻は1時過ぎだ。
飛行機は3時25分発だという。
間に合おうが間に合わんが、とにかく、わたしがパスポートを届けるしかないのである。

国際空港行きのバスは別府まで行かないとない。
とにかくタクシーだ!
と、思ったそのとき、隣人のC子から電話が入る。
「バスじゃ間に合わん!パスポート持って下に降りてて!」と電話の向こうで叫んでいる。
「……?」
え? なんでC子が?
「K雄さんからK子さんを助けて欲しいって電話があったのよ!わたし今街にいるからすぐに行くから!」
ヤツは、打てる手はなんでも打ったらしい。。
わたしの車は軽だ。ましてや福岡空港など行ったことがない。
その昔、両親を乗せて初めて車で博多に行ったとき、緊張のあまり着くなりキャナルシティで吐いてしまったほどだ。
それを知ってるから何度も空港に行って土地勘もあるC子が有無を言わさず助けに来たのだ。

なんとありがたいことか!

しばらくして来たC子の車にすべりこみ、
高速に入ったのは、1時半を過ぎていた。
最低でも1時間半で着かないとアウトだ。

その後はハリウッド映画のカーチェイスばりだ。
料金所をぶっ飛ばし…じゃない、その勢いで、前に、もたついている車があれば、
「オラオラのかんかい!」
「さっさと走らんかい!」の罵倒が飛びかう。
「覆面パトは8ナンバーのセダンよ!みたら言って!」
「わかった!」
そんな怒号が飛ぶ中、相方から電話が入る。
「高速入った?」「いまどこ?」
しまいにわたしも声を荒げる。
「ギリギリまで頑張るからそっちは飛行機待たせて!」
むちゃくちゃなことを言い放っているが、
交渉の結果、「タイムアウトは30分前の2時55分。それまでに入ればいい」といわれたらしい。
だんだん無言になるわたしら。
メーターをチラリと覗くと***キロである。
見てみぬふりをして、わたしは黙ってメールを打ち続ける。
「日田通過!(40分で!)」
「朝倉通過!」
「甘木通過!」
筑後小郡通過!」
大宰府まで4キロ」
だんだん胃がキリキリ痛んで来る…
しかし、相方はこの時点でGoogleを見ながら、もう無理だと思っていたらしい。
でも、うちらは最後まであきらめていなかった。
午後2時45分。
都市高に入った瞬間、C子が言った。
「混んでない。いける!」
即、メールを打つ。「いけるかも」
「いけますね!」
これを言ったのは、同じように相方と動向を見守っていたANAのカウンターのおねーさんだという。
その言葉で光を見た相方が、
「発着場の車止めで待ってるから!」。

そして、2時53分到着!

向こうから相方がしらしんけん走ってくる。窓から差し出したパスポートをひったくるようにして中に飛び込む。
「いけーっ!」
「走れーっ!」
女子の声援をあとに、相方は間一髪で間に合った。

もしわたしがバスで行ったら、もしC子が街にいなかったら、もしC子がたまたまガソリンを満タンにしていなかったら、もし渋滞していたら…
5分、いや3分の差で完全にアウトである。

数々の幸運に恵まれ、大興奮のドライブのあと、ああ、おもしろかったー!といったC子にも、天にもほんとうに感謝だ。
だからこそ、帰りに「コストコ寄りたーい」と言った彼女をどうして止めることができようか…


原稿はもうあきらめ、わたしも目いっぱいコストコで買いまくったのは言うまでもない。



ほんとうに人生、何が起こるかわからない。スケジュール通りなんていくわけない。。
だから、早く原稿は仕上げておきなさいという教訓か。。(泣)


それにしても相方は当分わたしらに頭が上がらないだろうな…(笑)