行き当たりばったりの結末

ふつう、わたしたちの仕事は、取材をするとき、必ず取材先にアポを取ることから始まる。
その際、まず、前持ってカメラマンや、デザイナー(同行する場合は)、もちろんライターのじぶんとのスケジュールが合う日を聞いておく。
そして、取材先へのアポ。じぶんの身分を伝え、編集元または会社を伝え、取材趣旨を伝えて許可を取る。
そこに、取材先側の都合のいい日を当てはめるわけだけど、取材先が1軒だけならいいけど、一日に3、4軒一度に尋ねるとなると、これが至難の技だ。
A店はこの日がいいけど、B店はこの日がいい。と、さまざま。
向こうは、頼んでいないのに、こっちが勝手に押しかけて取材をさせてもらうのだから、向こう様の都合が優先なのはあたりまえ。
けど、取材先、カメラマン、デザイナー、ライターのすべての都合がぴったり合うのを待っていても、なかなか進まないので、後はもう強引さと哀願しかない。(アポ取り名人のイベンターIさんは、キアイですよ!と言い切っていたけど…)
そして決まれば、タイムスケジュールを作り、各取材先に連絡し、スタッフにも連絡する。
このアポ取り作業は、ほぼライターの仕事だ(ほぼというのは、ごく稀にしかないけど、クライアントが決めてくれるラッキーな時がある)。
このアポ取り作業。長年やっていても、今だにけっこうストレスで、わたしのもっとも苦手とする作業だ。
これがなくて、行き当たりばったりの突撃取材だったら、どんなに楽だろう?
気楽に行けて、ちょっとのぞいて取材OKなら、そのまま行って、断られたら次に行く。
なーんて企画ないかな〜。
なんて考えていたら、驚くことにあったのよ!!
実はI印刷社から、11月から始まる情報誌のリニューアルの仕事をいただいた。
「Aさんが(わたしのライター名ね)、好きなように楽しめるものを企画してください」なんて言われたものだから、調子こいて、ダメ元で、「歩いて歩いて秋に会う」と題して、行き当たりばったり型の取材を企画して出したら、どうよ。なんと、これが通ってしまった。
「では、これで行きましょう。これでお願いいたします!」
って、なんと理解のあるクライアント!だろう。
理解は、別名「まる投げ」とも言うが。。。


で、先日、この取材を決行する日が来た。
特集4Pで、山沿いのA町と、海岸沿いのO町を取材。
実は、このAとOがある東の街ゾーンは同じ県にいながら、ほとんどわたしの未知の領域と言っていい。
それで東の街で育ち、A町の高校にも通っていた相方に情報収集を頼んでいたんだけど、ありがたいことにロケハンに連れて行ってくれるばかりか、会社の人たちにもリサーチしてくれ、見どころスポットを地図にまで落としてくれた。
このリサーチマップを頼りに、始まった当日の取材。
現場には、I印刷が助手に付けてくれた新人の女の子(なんと平成元年生まれ!)と、中堅の感じのいいカメラマンが、わたしの指示を待っている。
「まず、T山とT塚公園の2箇所で秋らしい風景を撮って、その後、その周辺でおいしい秋や、ほっこりしたスポットを見つけに行きましょう」と、思いつきで、もっともらしいことを言ったら、すかさず平成女子が、「わあ、楽しそう!ほんとにいい企画ですね!」とアニメの吹き替えのような声で賛同してくれた。(そ、そうかな。。。)

実はT山までトレッキングのような散策は、ほんとうは、ちょいとキツイなあなんて思ってたんだけど、これが森に入ってみるとなんとまあ、セントラルパークのごとく!


美しい森をどんどん入るごとにフィトンチットを浴びて気持ちのいいことこの上ない。
となりで、平成女子が「わあ!」「きゃあ!」「すごーい!」とかわいい効果音を上げてくれるもので、カメラマンもテンション上がりまくりて…バシバシ撮ってくれる。
あまりの写真点数に、これはT山だけで持つなと感じたわたしは、そこで、企画をころっと変える。
「あ、T塚公園はやめましょう。T山に絞り、周辺のスポットだけにします」
「はーい」と素直にしたがってくれるカメラマンと女子。
やあ、いいわあ、これ。
営業サイドに気を使うことなく、スポットは選べるわ、移動時間にしばられんわ、その場の雰囲気で決められるわ。
こんな、楽しいことだからけでいいんかい?!
と喜んだのは、つかの間。
周辺のお目当てのケーキ屋さんは定休日だし、目玉のおうちカフェはいまいち絵にならないし…


(カフェのベーグルは相方の勝ち!)

そして、続くO町はリサーチしてなかったばかりに、見事にハズれた。
この町には見事に何もない…。
仕方なく3人でうろうろして見つけたのは、ケーキ屋、カメラマンの知り合いがやっているおしゃれな焼肉屋(しかも営業時間外で外観のみ)、その店主に聞いたプラモデル屋の3軒のみ。
川沿いがコスモスのスポットだと聞いて行ってみたが、ちらほら申しわけなさそうに咲いている。
唯一町の噂の名所だという海を見下ろす展望台は、曇っていて海が見えんし(泣)。
「こ、こんなんでいいんですか…」と不安がるカメラマン。先ほどのテンションはどこへやら…
「だいじょうでしょうか、まとめていただけますかぁ?」とカワイイ顔を曇らせて、彼女の初仕事を心配そうに見守る女子。
そこでハッタリをかます、年季の入ったライター。
「だいじょうぶ!定休日のケーキ屋と焼き肉屋は明日わたしが撮ってきます。あとは何とかストーリー付けてまとめますから」
ほんまかいな…
翌日撮ったケーキ屋の写真がこれよ。ちょっと使えんやろ…


(一応、ハロウィン風景は撮ったけど…)


(何かちがう…)

おまけにおしゃれな焼き肉屋さんは、友人に付き合ってもらったので、ガールズトークに夢中だったせいで、注文したのがメインの定食ではなく、ビビンバだったし。


(もっと、おしゃれ定食があったはずなんだけどね…)

いったい、この行き当たりばったりをどうまとめるよ?
納期は5日だってよ。
ライターの腕の見せどころとは言え、どうなることやら。。。(汗)
リニューアルした情報誌11月号をお楽しみに!(名前はふせておく)