寒い通夜

冬のお通夜はさびしくて寒い。
友人Nの姪っ子、小さな女の子だったMちゃんは、ちいさなちいさな可愛い女の子を抱いた、いいママになっていたけど、今日ばかりは娘に戻り泣きじゃくっていた。
シャイでいつも控え目でにこにこ笑っていたお姉さんが、華やいだ花に包まれた壇上で大きな写真で飾られているのが、どうも違和感があった。
通夜のあとでも、みんな集って、早すぎる死を、なぜ?と話し合っていた。
みんなきっと明日は我が身とばかり、「癌」の存在を怖れたのだろうと思う。
年末に見たTV番組で癌の特集をしていた。
現在、癌にかかり、やがて再発の運命にある有名なジャーナリストが「癌とは何か?」を追って、世界中の研究者たちにインタビューをしていた。
そこでわかったことは、人間は癌を退治できるものは、まだ何一つ作られていないということ。
確かに世界の第一線では、癌の研究は進み、分析も進んでいる。
癌とは何か?
そこをひも解けば解くほど、癌は強力なものだとわかってくる。
6億年前から存在していたという癌は、人の進化とともに進化しているという。
検査の数値にはわからない、細胞の中にこっそり隠れて、再発をしてくる癌という生き物は、人の数だけ個性があるらしい。
つまり、癌イコール自分自身だと。
抗癌剤は癌だけでなく、自分自身をも攻撃することになるのだ。

じぶんだったら、どうするのだろう?
なんて、通夜に涙しながらぼんやり考えたりしたけど…それも無駄なこと。
だって未だ始まっていない未来のことだもの。
それより、今をいかに楽しむか?結局、そこに行きつくんだよね。
あんがい、それがいちばんの特効薬かもしれないなあ〜