さよなら、景観…

朝聴こえていた鳥のさえずりは、ブルトーザーの音とかなづちの音、おっさんたちのどなり声でかき消されてしまった。
緑の田んぼと、おもちゃのような汽車が行き交うのどかな景観は、アパートの屋根でふさがれてしまうだろう。
さわやかな風と木々の空気は、工事のほこりとガソリンの匂いに変わってしまった。
永遠のものなどないし、変わりゆくのが世の中の常だけど…
自分の土地に何を建てようと地主の勝手であり、わたしたちが阻止する権利などはなにもないんだけど…
それは十分わかってはいるんだけど…


人んちの真下に2階建てのアパートなんか建てるなぁぁ!!


と、声を大にして叫びたい!

ここの建設会社の社長は、緑ゆたかな山の中にとつぜんオレンジ色のでかいアパートを建てて町中のひんしゅくを買っている。さらに、無理やり道路沿いの敷地に2棟も建て、わずかに余った残りの土地(我が家のすぐ真下)にこれでもか!とばかり突然、4棟目のアパートを建て始めた。
近所に何の断りも相談もあいさつもなく…
「景色はあんたんちだけのもんじゃねえ」と言われてしまえば、もう、なにも言えない。
この暴挙にも口を閉じているしかないらしい。行き場のない怒りをどこにぶつけていいのかわからない。
気分を悪くすればするほど、自分へのストレスが増すだけだ。
だけど、まあ、こんなものなんだろうなと、しだいにあきらめの境地になった。
いちばんいい解決は、あきらめて受け入れることだ。
許すことだ。
あの社長は昔ながらの土建屋のおっさんで、礼儀がないけど、悪気もないだけなんだろう。このタイプの人々が景観のデザインなど何一つ考えず、ガンガンと家やビルを作り、日本の風景をハチャメチャにしてきたのだろうな。

工事は、あと2、3ケ月かかるそうだ。
とうぶんの間、毎朝、ガンガン、ガーガーという騒音で目が覚めそうだ。
これは、自分との試練とたたかいになるんだろうなあ〜。