さよなら、母さん

今病院からのバスの帰り。
大都市東京の外れのT市で2週間。
渋谷や原宿や代官山に遊びに出るわけでなく、東京に来たら絶対に連絡してよと言われていた友人に会うわけでもなく、
ただひたすらに、毎日家と病院を往復していた日々も今日で最後。
看護師たちとすっかり顔なじみになってしまっほど。
やっとかろうじて話しが通じるようになって来た母に、
母さん私は帰るからね…としみじみ話していると
「退院はあした?」
と、いきなり話しの腰を折られて返事に困った。
もう母が病院を出ることはないだろう。
だけど、
「退院するにはもう少し治療をしないと…そのためにも看護師さんや兄ちゃんの言うこと聞いて…」
「もういい、わかった」と顔をしかめて目を閉じる。
か、かわいくねぇー
でもまあ、このくらいの方がいいか。
後ろ髪引かれなく帰れそうだから。
じゃあね、またね。と言うと細い手を頼りなく振った。
さよなら、母さん。
また会えたらいいけど、今はとにかくサヨナラ。