一進一退

Teresa2009-04-18

「わたし、だーれだ?」
「オオツカさん?」
ダ、ダレやねん、それ?
「あんたの娘よ、娘! K子!」
「ああ…K子」
毎朝、こんな会話を繰り返している。
「わたし、だーれだ?」のあいさつに、とんでもない答えが返ってくることもあれば、一発OKのこともある。
昨夜は脈拍が上がり、かなり苦しそうだという話を聞いたかと思えば、「いいえ、別に変わったことはありませんよ」と看護師はいう。
回診に来た医師は「早くご飯食べたいよねー、もう少しかな」とテキトーなことを言うそばで、おかんはハアハア言いながらこんこんと眠り続けている。
昨夜仕事合間に見舞いに行った甥に、「もう、じいちゃんのところへ行くよ」とボソっと言ったというおかんに、今日私が「父さんのところへ行きたいんだって?」と確認すると、その時ばかりは目をつむってしっかり首を横に振った(笑)。
母の周りでは、情報が錯綜し、症状はくるくると変化し、その度にふりまわされ、一喜一憂をしてしまう。
まあ、一進一退、三歩進んで二歩下がるってところかな?
もう、腹くくって、もう一週間、時間の許す来週の金曜日まで付き合うことにした。
それにしても感心するのは、この病院の天使たちよ。ここの看護師さんのよく働くことったら!治療はもちろんながら身の回りの世話にも実にかいがいしい。
「体の向きをかえますよ」「歯磨きしましょう」「顔をふきますよ」「ツメを切りましょう」「パジャマを替えましょう」「足を洗いますね」…などなど、病気してなければもう、極楽じゃん(いや、病気せな入れんけどさ)。
『病院はサービス業だ』と言った人がいたけど、まさにここの仕事はプロのサービスをしてくれる。しかも、みんな天使の笑顔で感じがいい。
母は入院して、今までの病院の中でいちばん看護師がいいと言っていたけど、それだけでも良かったよなー。2人部屋で広くて明るいし、ナース室のすぐ側だし(それだけ重病ってことだろうけど)、すでにホスピスにいるようなものだよなあ〜。
今日は一生懸命に話しかける私を、母はウザそうにあしらって、ただただ眠り続けていた。
明日の母は、またちがうだろうな。
それにしても父も母もいない団地の住まいに、今、滞在しているのだけど、独りは好きなはずなのに、両親不在の部屋で夜ひとり時間は、なんだかミョーにさみしい。
朝から夕方までいるせいか、体力も少々落ちている。
思いつめず、懸命にならずに、ここらで少し肩の力を抜こう。
まあ、なるようになるさ。