極寒の地で

最近やけに温泉づいてる。
なんだか毎月温泉の取材に行ってるような気がする。去年の年末に某雑誌の温泉特集取材で北へ南へ看板を頼りに行ったばかりなのに、年が明けてすぐに、同会社から「温泉本」を出すということで、五件も取材!
まあ、幸いN湯温泉とK町温泉ってことで近いところに固まってくれたので、一気にアポを取って一日で取材を終えた。
N温泉は湯の華特集だったんで、取材の合間に貸切り風呂に入ったりして、それはそれは極楽気分だったんだけど…その後が、K高原コテージから望む夕陽の見える温泉の取材。おまけに編集部からの希望が、太陽の丸い輪郭がはっきり出るように撮影して欲しいだと。
確かにそこのホテルの女湯の露天風呂からはダイナミックな風景が望める。山に沈む夕陽も鮮やかさを増すだろう。
ホテルの人が言うには、最近の日の入りは夕方の5時過ぎあたりだという。女性湯に今は誰も入っていないが、5時半に団体客が到着するという。この寒さなら夕食前にソッコーみんな温泉に飛び込むだろう。
と、なるとその間、わずか5〜10分あたりだ。鮮やかだった太陽もだんだん雲に覆われてきた。少々焦るカメラマン。もしもの時のために、まだ日があるうちに輝きを出している写真を撮っておこうと5時前からスタンバイする。ふいに立ち寄り客が来ないとも限らない。ホテルの人も、「お客様が来たら少しだけ待ってもらいますね」と協力的だ。私も少し緊張しながら、カメラマンと一緒に露天風呂の外に立つ。
じわじわと山の向こうに輝くほどのレッドサンが光を放つ。このまま雲にも客にも邪魔されず、沈んでくれればバッチリの絵が撮れるんだけど…どうも雲が多くなっている気がする。その上、寒いのなんのって!! 足も顔も手も氷のよう。可能ならば目の前の風呂に飛び込みたいほどだ。思わずカメラマンは湯に手を付ける。私はと言えば先ほどから真剣に念じていた(笑)。
太陽を目掛けながら「大丈夫、いい写真が撮れる!!」
すると、どうよ。雲の切れ間から縫うようにして太陽が現れて来たではないか!
天空にはショッキングピンクからオレンジがかったピンクまでの見事なグラデーションが広がった。
(ホテルの前にはまだ雪が…)     (露天風呂から見事な夕焼け) 
  

午後5時20分。夢中でシャッターをバシバシ切るカメラマン!
このわずか5分の間に1時間近く、極寒の地で外に出て立ち震えた私。
「パーフェクトな夕焼けだ!」カメラマンのS氏が感嘆の声を上げる。
「私が念じたからですよ」と言うと、「さすがですね〜」とわけのわからん賛辞をいただいた。
カメラマンが言うには、どんなにいい天気であろうと美しい夕焼けがバッチリ撮れるのは、年にほんの数回しかないのだという。だとしたら、こんな夕陽はめったに拝めないということか。そう思えば寒さに身をさらした甲斐があったというもの。この後すぐに女性客が入湯してきた。
過酷な取材で帰り着いたのは夜中。なのに、その夜この寒さの中をわざわざまた同じ極寒の地へUターンし、田舎ハウスに行くとは…
なんて、もの好き野郎だろう(泣)