横道に逸れて

3日の夜から泊り込んだ義母が、4日の日に散歩に出て興奮して帰ってきた。
「すごいものを発見したよ!この坂の下に岩清水が流れているのよ!下には親子のお地蔵様がいて、見上げると空がぽっかり浮かんでいるの」
感激屋の義母の話は、いつも詩的だが、テンションが高くなると話半分に聞いていた方がいい(笑)。とは言え、子どもの頃から住んでいてそんな場所があるなんて知りもしなかったから、かなり興味をそそられた。で、5日の暖かな日に相方と一緒に散歩がてら、そこの場所を探しに行くことにした。
我が家の裏山を登って、そこから市街地を見渡す丘の上の公園に出る。そこからつつじが咲く坂道を降りて行く公道があり、下に降り付いたところから横道に逸れると細い道に出た。
すると、今まで見たことも、歩いたこともない風景が現れた。ひっそりとした人も通らなさそうな道。山側には小さな水路も通っている。水路に沿って行くと確かに水音がし、岩壁から清水が流れる岩があるではないか! 清水の落ちた先には埋もれるような小さなお地蔵様。ただし、親子の地蔵というのは母にだけ見えたものらしく、それは弁天様の地蔵と首だけの地蔵顔だったけど、いつからそこに鎮座しているものなのか?岩清水の向こうには今にも朽ち果てそうな民家が2軒。人も住んでいないかと思いきや、庭には積み重ねられた薪があり、七輪の上に乗った鍋からは湯気が立っているから、誰かが住んでいるのだろう。
なんだか忘れ去られた不思議なエアポケットのような場。ちょこっと横道に逸れただけで、こんな隠れた場所に出会うとは…。ちょっとしたサプライズな贈り物のようだ。
無邪気に、この道まで散策に来てくれた義母に感謝だ。

(たまには公道を逸れてみるもんだ…。きれいな清水が落ちる場所で)