美しき誤解

7日の日に相方の昔ながらの友人が作る会の新年会があった。場所はメンバーの中で唯一のカップルの新築の家。
相方と同期の男女8人を軸にして続いているのだが、これが、どうやったらこんな純粋で気持のいいワカモノ(私から見れば…)ばかりが集ったのだろう、と思うほど、みんな気のいい優しいコたちばかりだ。その男女8人結成組からすでに年月が経ち、もはやその男女の半分には妻子がいるのでメンバーはどんどん膨れ上がり、その夜は最高の大人11人と、子ども4人という大所帯となった。
もちろん、一番の年寄りは私なのだが、なぜかこのメンバーには初回からすんなりと溶け込み(いや、受け入れてもらって…)、すでに古株のような感じで居座っている。
そんな中で、どうもいつの間にか、美しいようなおそろしいような誤解が生じている。
それは、なんと、私が料理上手だという誤解だ。
それを聞くと私の友人たちは、腹を抱えて笑うか、腹を立てるか口をあんぐり開けるかのどれか、だ。それくらい、私は自他共に認める料理下手だ。
なぜ、そんな誤解が生まれたかのか定かではないが、それは一重にクリエイティブでチャレンジャーが起こす偶然と、エエかっこしいが起すパフォーマンスの産物に過ぎないと思う。
その誤解の発端は、前回我が家で行った集いの際にふるまったおでんである。
ダシは市販のおでんの素と、他になにやら思い付くまま、いろいろなダシを使って、何でもかんでもブチこみ、圧力鍋でてっとり早く煮ただけなのだが、これがエラくウケた。
「こんなおいしいおでんを食べたことがない」とまで言われた。
すべてが幸運な偶然で、どうやったらあの味になるのなんて私さえ知らないし、今や幻となっている。
さらに、拍車を付けたのが、そのとき、ちょいと気が効く姉さん女房を演出してみたことだ。
食事の途中、そろそろ何かを食べたいなあ…と思う頃、ホストの妻はさりげなくキッチンに立ち、ギョーザの皮にチーズを挟んで揚げる、サルでもできるツマミを作って、あつあつを何気にスッと出すというパフォーマンスをやってのけたのだ。
そのタイミングの良さに食卓から「おおっ!」という歓声が上がったほど。
こういう演出がツボにハマると、「料理上手」というありがたい思い込みをされてしまう。
しかし、そうなると、次回がタイヘン!
その誤解に何とか答えるため、今回は(も!)、正真正銘の料理上手の隣人にレシピを聞いて電話で何度も指導をしてもらい、ボボティカレーロールサンドなるものを作った。さらに、よせばいいのに、自らの創作料理、ローズマリーとワインの蒸し焼き風チキンソテー(勝手に名付けた)というワケのわからんものまで作ってしまった。
だけど、所詮付け焼刃…は通らない。
チキンは味が染みていないし、カレーの味はさすがにいいが、具がパンからはみだしておいしくなさそうに見えたし…(子どもは口に入れてすぐに出した)
まあ、持ち寄りだったので他の料理にまぎれて私の手作りとはあまり気付かなかったらしいのが幸いした。
しかし、それでも彼らの口々に上るのは、またもや、あの幻のおでん。
メンバーの、まだ少女のような(私から見れば…)奥様からは、「主人があれはうちで食べるのとまったく違う味だってずっと言うんです。今度、味付けを教えてください」などと言われてしまうし…。
メンバーの女の子からは「何と何を混ぜて入れたの?」とまで聞かれて、「う〜ん、いろいろ…」と口ごもっているときに、ほろ酔いかげんの相方が自慢気に堂々と言ってくれた。
「彼女の作る料理は、二度と作れない味ばかりなんだよ!」
おい…
毎度のことながら、ありがたいフォローじゃないか…(泣)
はいはい…私らしくが一番だよ。無理せず、二度と作れない味レシピを極めようではないか。