ひとり空間 ふたり時間

「愛とは互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめること」
とは、サンテグジュペリの有名な言葉だが、私が若かりし頃、初めて目にしたこの言葉に妙に弾きつけられたのを覚えている。
そして、今、人生を歩く相棒ができて、その言葉の深さをしみじみと体感している。
少し離れたふたりが互いに立ち、同じ方向を見つめていくことこそ、愛には必要なのだと。
うちは3LDKというは二人にちょうどいいサイズのマンションに住んでいるが、相方は北側の仕事部屋でPCに向かい、私は3畳の和室に座卓を置いて小さな仕事の間にしている。決めたわけではないが、お互いにいつの間にかそんな心地いいひとり空間を作ってしまった。
休日やオフの時間などは、どちらからともなく、それぞれがその空間に引きこもるときがある。今夜も秋の夜長、そこで互いが何をしているかも知らず、思い思いの時間に没頭している。
私は仕事の合間にブログを書き、相方は明日のスペイン語検定の試験勉強と称して、きっとアニメを見ている(しっかり音が聞こえてくるし…)
この時間が、私はとても気に入っている。
ふたりで居るときは、思いっきりふたりを楽しむ。だけど、自分に還りたいときは、独りをじっくり愉しむ。
夫婦は他人だというけれど、結婚という旅は、同じ船に乗り合わせた縁のある他人同士が始めるスリリングな冒険だと思う。
旅の途中で、どちらかがリタイアするかもしれないし、留まってしまうかもしれない。少しでも長く、いい旅にするためには、心の体力が必要だ。
そんなとき、ささやかだけどこんな、自分のための空間と時間が栄養剤となり、少しずつ、自分を育て、ふたりを育てて行くんだろうな…。