サプライズサンデー

その日、日曜日だと言うのに私は午後から撮影の仕事が入っていた。
いよいよ仕事が本格的に押して来た。スケジュールがめいっぱいで取材の日取りを入れるのさえ精一杯だ。
その反対に相方の方は約半年間の重労働が終わりに近づき、落着きを見せ始めている。日曜日は、私が仕事に出掛け、相方が家で帰りを待つといういつもとは逆の状況。
19時あたり、やっと撮影が終わり、相方をまねて、「今から帰りますね」とカエルメールを打った。
駐車場まで迎えに来てくれた相方に、お腹ペコペコの私が「どこかに食べに行く?」と聞くと、「う〜ん…」と口ごもった後、「実は少し作ってあるんだ」と言う。
「作ったって、料理を?」「うん、餃子と味噌汁だけだけどね」
絶句した。マジかよ…
そう、確かに「誕生日プレゼント何がいい?」と聞かれて、「一日主婦して」と冗談交じりに答えたけど、まさか本気で作るとは!
しかも、餃子と味噌汁?!一瞬、食えたもんじゃないかも…とか、台所はすさまじい惨状ではないか…などという思いが頭によぎったが、そんなことより、その気持ちとトライしてくれたことがすげぇ嬉しかった。
けど、それは想像を超えていた。
キッチンには、いつでも揚げたてを食べれるように、準備万端に整った餃子が計ったように同じ大きさで美しく並べられていた。小さな鍋にはきちんとダシを取ったというワカメと豆腐の味噌汁がすでに出来上がっている。生ゴミもゴミ袋もきれいに片付けられたキッチンを呆然と見ている私の横で、相方は手際よく次々と餃子を揚げていくではないか。その上、餃子の中身はサバとトマトピューレとチーズと乾燥パセリという、まさに先日、料理研究家の奥園とし子がTVで披露していたあの料理ではないか!!私もいつか作ってみたいとは思っていたけど、餃子はめんどくさいなぁ…と敬遠していたと言うのに…わざわざネットで引っ張り出してレシピを印刷しているのだ。
果たして、その味は…
ウマい!!!!のである。
揚げたての餃子は食べだしたら止まらない。味噌汁はおかわりをしたほどだ。
まさに、感謝感激、サプライズの誕生日プレゼントだった。
能ある鷹は爪を隠すとは言うものの…に、しても日頃のあのだらしなく、めんどくさがりやで、家事などほとんど興味なく、言われなければ動かない、あの相方がまさかここまでやるとは誰が想像するだろう。
まったくの想定外だった。
まあ、たまに手伝ってくれる掃除や皿洗いは、相方がやれば私より丁寧にやっていたけど、料理までとは…。
この人、よく、私のあんなマズイ料理でガマンしてるよなあ…なんて、実は軽いショックを受けてしまった。
大工仕事もできないなんて言ってたけど、実はやらせればスゴイものを作れるんじゃなかろうか?
あと相方に私がかなうことと言ったら、世俗の知識と、人とのコミュニケーションくらいなものじゃなかろうか。あんまり自慢にもならんけど…(泣)
だけど、もちろんこれは喜ばしいことでもある。
しっかり実力を見せてもらった今は、私の料理の腕を磨くより、相方に腕を磨いてもらうことにしよう。
そして、褒めればノル単純なB型(失礼!)に、月イチくらい料理を披露してもらうことにしようではないか。