旅の行方

最近、若い友人がドイツに発った。
ずっと遊んでバカやって暮らしたいというのが彼女の理想のようだ。
その彼女は映画が好きで、映画を見る度に思うのだそうだ。
「私はこの国のどこにも行ってない…」と。
それを聞いて私は少し苦笑した。彼女の年の時、私もまったく同じ事を考えたからだ。
この広い地球にいて、私はどれだけの国を知っているだろう?そう思うと妙に焦って、お金が少しでも溜まると海外に飛び出していた。
特にラテンの国々。
パラグアイウルグアイボリビア、ブラジル、アルゼンチン、スペイン、メキシコ、そしてニューヨーク、香港、イギリス…観光というよりは短期間の滞在だった。
不思議なことに海外に出ると、ぬくぬくと安全地帯で暮らしていた飼い猫が、突然野生に戻ったかのように、ピンとアンテナが立ち、神経は冴え渡ってくる。エネルギーが漲り、体は軽くなる。その感覚は慣れ親しんだエリアから外に出ないと味わえない。一人旅なら尚いい。集中力が湧いてくるからだ。たぶん、この感覚に会いたくて、それが必要で私は外に出ていたような気がする。

去年、久々にハネムーンでエルサルヴァドルとメキシコに行ったけど、なんだか、昔とは少し違っていた。うまく言えないけど、あの旅の目的は外に出ることではなく、まだ慣れない相方との距離を縮めるための旅だったんじゃないかと思う。
事実、あの後から私たち二人は急速に近くなり、身内になったと思う。

そして、今思うのは、私の旅の目的は外にあるのではないということ。
地球上の裏側まで行かなくても、私は長い旅をしているのだと気付いた。昨日から今日、今日から明日、一歩一歩前に進みながら、気付き、発見、出会いという旅のお土産をもらって、これからもずっと旅を続けていくのだろう。
今は隣に旅の道連れがいる。
周囲には、心地よい、気の合うさまざまな道連れが増えて来た。
昔はケつまづき、へたばり、後ろを振り返ったりしていたけれど、今はもうだんだん旅上手になって来た。
今は、旅を続けられることに感謝し、先を楽しみながら、前に進むだけ。
この先、どんな自分が待っているんだろう…と夢見ながら。